書く書く しかじか

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東京五輪 過去最高の国内スポンサー収入だけど… 東京2020これでいいのかvol.3

「1業種1社」の原則撤廃で組織委がっぽり

 東京五輪は前述の通り、1業種1社としたスポンサーシップの慣例を事実上撤廃し、多くの同業社が相乗りする形を取っています。では、そのメリットはどこにあるのでしょうか。


 まず第一に、スポンサー企業の数を増やすのが格段に容易となり、組織委が金銭的に潤うという点が挙げられます。組織委は1業種1社の撤廃によって、スポンサーの募集、その後の選別に対する苦労が減ったことでしょう。仮に1社あたりの協賛金を少し引き下げても、同業から2、3社がスポンサーに入ってくれれば、組織委の収入は増すことになります。


 スポンサーになりたいと考えていた企業側から見ると、1業種1社の方針の下で、同業他社に敗れるという最悪の事態を回避できます。呉越同舟という負の側面はあっても、東京五輪に賛同している企業として広く国内外にアピールできるのは、この上ない魅力と言えるでしょう。

 

 また、「オールジャパン」の金看板の下、日本国として一致団結したムードを演出する効果も多少期待できるかもしれません。なにせ、普段は競合している企業同士が、手を携えて五輪をサポートしているイメージを醸し出せるのですから。

 

目標額を超えたのに…足りない

 組織委は当初、1,500億円のスポンサー収入を目標としていました。それは2015年4月時点でクリアする見通しが立ち、「国内スポンサー収入で五輪史上最高となるのが確実」という報道が出るほどでした。
 ちなみに、2015年4月14日の日経新聞によると、08年北京の国内スポンサー収入は当時の為替レートで約1,460億円、14年ソチは同1,560億円だったとのことです。
 

 しかし、その目標額では足りない事態になってしまいます。五輪立候補時は総額7,300億円だった費用が、見積もりの甘さや資材の高騰などによって上昇。関係者の間で「2兆円」とも「3兆円」とも語られるようになり、組織委は仮設施設の建設経費を全て負担するとしていた当初の計画を撤回せざるを得なくなりました。

 

 1業種1社の原則を撤廃してスポンサーをかき集めていたのは、金銭面だけを見れば、正解だったと言えるかもしれません。

 

 2016年12月に組織委が発表した収入の内訳は以下の通りで、国内スポンサーは2,500億円とされています。

項目 金額
IOC負担金 850億円
TOPスポンサー 360億円
国内スポンサー 2,500億円
ライセンシング 140億円
チケット売上 820億円
その他 330億円
5,000億円

 

 その後、東京都は五輪経費の総額を1.4兆円と試算し、都と組織委がそれぞれ6,000億円を負担することでひとまず合意しました。


 上記表の通り、組織委の収入総額は5,000億円の見込みだったので、1,000億円足りません。


 2017年5月16日付の朝日新聞によると、組織委は足りない1,000億円のうち、500億円はスポンサー収入、残る500億円はチケット販売などで積み増すことを目指すということです。


 トップスポンサーはIOCの直轄なので、組織委が手を加えることはできないでしょう。となると、2,500億円としていた国内スポンサー収入を3,000億円まで伸ばす必要があるということです。3,000億円と言えば、北京やソチが集めた国内スポンサー収入の約2倍。これだけ増額しても組織委だけで仮設施設を建てられないというのですから、五輪の肥大化は現実的に解決しようのない根が深い問題です。

 

 さて、次にスポンサーシップにおいて、1業種1社の原則撤廃がもたらすデメリットについて考えてみたいと思います。

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