書く書く しかじか

旅行記、食べ歩き、スポーツ、書評などなど、赴くままに書き連ねるブログ。

フォーシーズンズ京都 アフタヌーンティー 京風へのこだわり隅々まで

文化の薫りを感じながら

フォーシーズンズ京都へ、アフタヌーンティーに出かけます。

 

フォーシーズンズ丸の内のアフタヌーンティーは、昨年味わいました。型にはまらず、オリジナリティに満ちていて、大変素晴らしいものでした。国内2軒目のフォーシーズンズとして2016年10月にオープンした京都は果たしてどうでしょう。

 

フォーシーズンズ京都があるのは、京都市東山区。西隣が天台宗門跡寺院である妙法院、向かいが真言宗智山派の総本山・智積院、敷地を出て右手の突き当たりすぐに京都国立博物館という歴史と文化の薫りに満ちた場所です。そういう場所にこのフォーシーズンズが建てられたのは、理由があります。それは後ほど。

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入り口まで、竹の植え込みがある一本道を進みます。

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大きな木製の屋根を備えた車寄せ。

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チェックインカウンター。

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ロビーは和と洋をうまくミックスさせたようなデザイン。

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ロビーの待合スペース。

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待合スペースを囲むように棚が設けられており、日本を紹介する英字の本や美術書などが並べられています。

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1階のザ・ラウンジ&バー。シックな装い。

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ロビーにはデンマーク出身の著名なフラワーアーティストニコライ・バーグマンさんの作品が展示してありました。バーグマンさんのフラワーショップは東京・南青山のフラッグシップのほか、六本木や有楽町にあり、フォーシーズンズ京都にも入っています。

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京の秋を再現したということで、橙色に満ちています。3つのかたまりから成る作品は、色づいた樹木のようであり、秋らしいキノコのようでもあり、力強さと生命の躍動感があって、とても目を引きます。

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ブラッスリーにて

 

さて、アフタヌーンティーです。場所はブラッスリー。ロビーフロアから下へ階段を下りていきます。

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座ったのは窓際の席です。この日は、残念ながら雨。晴れていれば、屋外のテラス席でした。

電話予約した際の話を紹介しますと、1年で最も気候がいい秋のこの時期、アフタヌーンティーの客は基本的にテラス席に案内しているそうで、当日の天気が悪かったら、屋内に切り替えるとのことです。その際は、当然ながら屋内の席は確約されています。雨が降ってテラス席が使えない、加えて屋内は満席で座れない、といった悲惨なことにはならないので安心です。

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黒いカバーをかけられたテラス席。公式HPによると、テラス席は電話での完全予約制とのことです。予約なしで訪れて、空いた席があった場合、案内してもらえるのかどうか分かりませんが、どうしてもテラス席に座りたいと思われる方は、きちんと電話で伝えておいた方がよさそうです。

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テラス席側から見た建物。白いパラソルは閉じられています。

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平重盛ゆかりの積翠園 

ブラッスリーアフタヌーンティーや食事をする際は、やはりテラス席をお勧めしたいと思います。なぜかというと、テラス席から見える景色がこの写真のように素晴らしいからです。大きな池を備えた回遊式の日本庭園が、フォーシーズンズ京都の最大の特長です。

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この庭園は「積翠園」(しゃくすいえん)といいます。平重盛(1138~1179年)の別邸・小松殿の庭だったと伝えられています。平重盛平清盛の嫡男に当たります。

庭園は長く妙法院の境内でしたが、1954年に専売公社が買って敷地内に京都専売病院を建設。2005年からは民間の東山武田病院となりましたが、2011年に建物の老朽化などによって閉院しました。

フォーシーズンズ京都の建設は、そこから動き始めます。日経新聞によると、東山武田病院の閉院後、マレーシアの大手商社ベルジャヤ・コーポレーションが武田病院グループから敷地を借りて、250億円を投資してホテルを建設すると決定。運営をフォーシーズンズに委ねることになりました。ホテル内には分譲販売する客室が57室(広さ80~190平方メートル)あり、所有者から委託を受ける形で不在時に貸し出されています。総事業費は最終的に430億円となっています。

フォーシーズンズの進出が決まった背景には、京都ならではの事情があったようです。海外からのハイクラスの観光客に滞在してもらうには、旅館だけではなく、相応の高級ホテルも必要です。しかし、京都はそうした需要を満たすホテルが少ないという弱みがありました。政府が掲げる観光立国を推進していく上で、京都は中核となる都市の一つです。となれば、ラグジュアリーホテルを増やすしかありません。庭園の一部には建物の建設ができない規制がかかっていたそうですが、日経新聞によると、京都市は用途規制を外す特例でホテル建設を認めたとのことです。それほどフォーシーズンズに来てもらいたかったということでしょう。

1000年近い歴史を持つ庭園を、高級外資系ホテルの宿泊者や来訪者のためだけのものにしていいのか、という声があってもおかしくありません。ただ、一部でそうした批判的な見方をされるのは分かった上で、行政側はゴーサインを出したのです。様々な思惑が絡み合った末での決定だったのでしょう。

ともあれ、フォーシーズンズ京都は、この美しい池泉回遊式庭園を抱くような格好で建てられました。この地を手に入れることができたフォーシーズンズは、大変な幸運だったと思います。ただ、それを引き寄せたのは、現代のホテル業界にあって、世界最高峰のブランド力があればこそでしょう。フォーシーズンズに任せておけば間違いない、という安心感が、地元行政を動かした一因としてあるように感じます。

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客室からは浮島が設けられた池や庭の緑を見ることができます。

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由緒ある庭と高級ホテルという組み合わせは、東京で言うところの椿山荘のイメージでしょう。ホテルがまとう空気感は似ていると思います。

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紅茶もコーヒーも飲み放題

 

さて、話が庭園の方にそれていましたが、本題のアフタヌーンティーに戻って、こちらはブラッスリーの内観。天井が吹き抜けになっていて、とても開放的な空間です。われわれが訪れた時間帯に関して、ブラッスリーの利用客を見たところ、外国人7割、日本人3割くらいの印象でした。

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写真左手はバーカウンター。夜はここで落ち着いてお酒を飲めそうです。

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ブラッスリーには、こういった網目状の覆いに囲まれた席もあります。この写真は店の外からガラス越しに写したものです。

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アフタヌーンティーのメニュー。表紙には芸子さんのようなイラストが描かれています。さすが京都です。

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ここからアフタヌーンティーのメニューです。まずは紅茶。ドイツの老舗ロンネフェルトの茶葉を使っています。

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フォーシーズンズ京都のアフタヌーンティーは、飲み放題制です。紅茶を1種類だけ選んで、それをずっと飲む、といったシステムではありません。多くの紅茶を味わってみたい、という人にとって、うれしい仕組みでしょう。

ただし、ここに座っていられるのは最長2時間です。なぜなら、アフタヌーンティーの受け付けが始まるのは現状(2017年10月時点)15時からで、17時には退出しなければならないからです。仮に15時30分に入店しても、終わりは17時。つまり、15時に入店しなければ損ということになります。

 

2ページ目。こちらも紅茶のメニューです。

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3ページ目。ルイボスティーなどに加えて、コーヒーメニューが記されています。コーヒーはイリーを使っています。

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4ページ目。最後にアフタヌーンティーの食事メニューが書かれています。

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メニューを列記します。


スイーツ
・ 栗のモンブラン
・ キャラメルナッツタルト
・ スパイスパンプキンパイ
・ ハニープルーンアーモンドケーキ
アールグレイカロン
・ バニラスコーン
・ オレンジクランベリースコーン
・(自家製ジャム クロテッドクリーム

セイボリー
・ 鴨と銀杏のクロケット  黒トリュフ
・ サーモンと柿のブルスケッタ
キャビアと鶉(ウズラ)の卵  ラディッシュのオープンサンドウィッチ
・ 熟成コンテチーズのフラン 林檎のピューレ

 

紅茶はこのようなポットに入ってきます。

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その色味、京都そのもの?

 

さて、食事が運ばれてきました。この彩り、いかがですか。いかにも京都、いかにも秋といった趣向です。見た目も中身も洋菓子に違いないのに、どこか和の空気もまとっている数々のスイーツ。とても美しいです。ちなみに、このガラスのテーブルは、フォーシーズンズ丸の内と同じ形状です。 

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※参考 フォーシーズンズ丸の内 アフタヌーンティーの円形テーブル

拡大して見てみましょう。左はアールグレイカロン、右はハニープルーンアーモンドケーキ。マカロンの表面には、金粉が塗られています。

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左は上の写真と重複しますが、ハニープルーンアーモンドケーキ、右はキャラメルナッツタルト。

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左はスパイスパンプキンパイ、右は栗のモンブラン。栗には金箔。

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バニラスコーンとオレンジクランベリースコーン。パサパサ系で、粉が落ちるタイプです。

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スコーンに塗るクロテッドクリーム(左)と、オリジナルジャム。

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こちらは左から、 熟成コンテチーズのフラン 林檎のピューレ、鴨と銀杏のクロケット  黒トリュフ、 キャビアと鶉(ウズラ)の卵  ラディッシュのオープンサンドウィッチ、サーモンと柿のブルスケッタ。ご覧のように、トリュフとキャビアが異彩を放っています。

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ごちそうさまでした。フォーシーズンズ京都のアフタヌーンティー、楽しませてもらいました。いずれの食事もおいしかったです。トリュフにキャビア、金箔まで用いた食材の豪華さと、彩りの美しさは、他のアフタヌーンティーにきっとないものでしょう。京らしさが全体に行き渡っていて、作り手側の意図がこちらに存分に伝わってきます。ロンネフェルトの紅茶は、前に出すぎず、引きすぎず、ほどよいバランス感覚が特徴なのかなと感じました。

優れているのは、食事のビジュアル感だけではありません。ここには何よりも積翠園の景観美もあります。「インスタ映え」するのは間違いないでしょう。京都を味でも見た目でも感じたい観光客、とりわけ外国人観光客を高いレベルで満足させられると思います。

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ただ、京都らしさに徹底してこだわっているからか、スイーツにチョコレートやチョコレート系のケーキが含まれていません。個人的には、それらがメニューにないアフタヌーンティーは初体験でした。

京都らしさを必ずしも求めておらず、王道のアフタヌーンティーを味わいたいという人にとってみれば、フォーシーズンズ京都の食事メニューは「甘さ」が乏しいため、やや物足りなく感じるかもしれません。


細かい点でケチを付けるなら、アフタヌーンティーを提供するにはテーブルが少し小さいと感じました。スイーツとセイボリーを乗せた皿のほか、取り皿2枚、紅茶ポット2つ、紅茶カップ2つという必要最低限のものがぎりぎり収まるかどうか、といった大きさで、ほかのものはほぼ乗りません。また、滑らかなガラステーブル上を底が濡れた紅茶ポットが横に滑って、危うく床に落ちるのではないか、と肝を冷やした場面もありました。テーブルに関しては、改善の余地があるように感じます。

 

同じ価格帯でライバル関係にあるリッツ・カールトン京都のアフタヌーンティーは、ピエール・エルメのケーキやマカロンを提供しています。こちらは京都という地への意識を一切のぞかせることなく、ひたすら洋風で攻めています。フォーシーズンズ京都と面白いくらい対照的です。

京都で後発のフォーシーズンズはもしかしたら、リッツと差別化を図るために京都らしさを強調したアフタヌーンティーを出しているのではないか、とも感じました。チョコレートはなくても問題ない、美しい庭園をめでながら京風のアフタヌーンティーを楽しみたい、という人にとってみれば、フォーシーズンズ京都は最高の選択肢の一つになると思います。

以下は、ザ・リッツ・カールトン京都、ザ・リッツ・カールトン東京、フォーシーズンズ丸の内などのアフタヌーンティー記事。