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東京五輪 競技会場の座席数削減 予算減へ待ったなし 東京2020これでいいのかvol.7

馬術は33.6%の大幅減


 東京五輪組織委員会が、国際オリンピック委員会IOC)との合同会議で、12の競技会場で観客席削減を提案しました。組織委が至上命題の予算削減を図るために、客席数まで手を付けた格好です。

 

 具体的な削減数が出ているのは、以下の7競技。競技場名と数字は、2017年12月11日付、共同通信の配信記事を引用しています。

競技場 種目 招致段階 変更後 削減数 削減率
東京体育館 卓球 8000 7000 1000 12.5%
国立代々木競技場 ハンドボール 12000 10200 1800 15%
両国国技館 ボクシング 10000 7700 2300 23%
夢の島公園 アーチェリー 7000 5000 2000 28.6%
馬事公苑 馬術 14000 9300 4700 33.6%
東京辰巳国際水泳場 水球 6500 4706 1794 27.6%
伊豆ベロドローム 自転車競技 5000 3600 1400 28%
        計14994  

 
 最も削減率が低い卓球で2ケタの12.5%、馬術に至っては3分の1を超える33.6%となっています。削減幅は、決して小さくありません。

 

 そのほか、追加種目のスポーツクライミングや自転車のBMX、サーフィンなどで客席数を減らす方針で、共同通信によると、今回の削減提案は、当初計画から3万席を超えるとのことです。

念頭にロンドンの数字?

 
 では、東京五輪の競技会場のキャパシティーはどれほどのものなのでしょう? 何かと参考にされやすい2012年のロンドン五輪を並べて見てみましょう。ロンドン五輪の数字は、英紙デイリーテレグラフのホームページから引用しています。

  東京 ロンドン
卓球 7000 6000~10000
ハンドボール 10200 7000
ボクシング 7700 6000~10000
アーチェリー 5000 6500
馬術 9300 23000
水球 4706 5000
自転車競技 3600 6000

(※ロンドン五輪の卓球、ボクシングはExCelという、いくつかのホールを持つ大規模展覧会場が会場です。ホールはそれぞれキャパシティーが異なり、6000~10000人となっているため、こうした表記になっています)

 数字を見ると、競技によって東京が多かったり、ロンドンが多かったりしますが、概して東京の方が少なめといった印象です。

 東京五輪組織委員会にとって、おそらく大事なことは、全体を見渡してみた時、ロンドン五輪と同程度、ないしはそれより数字が少なくなることではないかと思います。IOCに予算削減を強く迫られる中、ロンドン五輪より観客数を少なくするところまで踏めば、十分なアピール材料になりますから。

 

五輪離れにIOCの焦り

 

 IOCはなぜそこまで予算削減を求めるのでしょうか。それは、前回のvol.6でも触れました(※リンク参照 東京五輪 招致 贈賄疑惑 ブラジル会長逮捕で再燃も)が、莫大な開催費用がネックとなって近年五輪招致に乗り出す都市が減ってきているからです。

 

 2024年の夏季五輪招致レースでは、ボストンに加えて、ハンブルク、ローマ、ブダペストといった欧州諸国の都市が次々と撤退。最終的に残ったのは過去に開催実績があるパリとロサンゼルスだけでした。

 

 24年で敗れた都市が28年に立候補する保証はなく、焦りを募らせたIOCは両都市を同時選出するという手に打って出ました。最終的に両都市は話し合いによって、24年はパリ、28年はロサンゼルスとすることで合意しました。

 

 2都市の同時選出は96年ぶり。開催都市を決定するIOC総会の会場に、東京が2020年の招致を勝ち取った時、招致委のメンバーが見せたような爆発的な歓喜の光景はありませんでした。

 

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パリ、ロサンゼルスを同時選出したことを「歴史的決断」と伝えるIOCのホームページ

 

 東京五輪の開催費用は2017年5月時点で、1兆3850億円と公表されていましたが、その後、見直しを進めた結果、350億円削減し、2017年末時点で1兆3500億円となりました。IOCは1兆3850億円時点で、10億ドル(約1100億円)の削減を求めており、その数字までは届かなかった格好です。 

 

 仮に1100億円を削減できたとしても、その額は1兆2700億円。これほどの負担に耐える財政力があり、なおかつ五輪を開催したいという都市は、現代ではまれな存在になってきているのです。

 

 これから招致に名乗りを上げそうな国・都市は、野心あふれる中国(開催実績がある北京以外で上海や広州など)か、潤沢なオイルマネーに支えられたUAEカタールなど中東諸国くらいしかないのではないかと思います。現状の規模を維持したまま開催できる都市は限られているのです。

 

 IOCはそんな五輪離れに焦りを感じています。だからこそ、東京五輪組織委員会に、予算の削減を強く迫り、今後の悪しきモデルケースにならないように目を光らせているのです。今回、東京五輪の組織委は3万を超える観客席の削減を提案しましたが、これで終わるとは思えません。削減はさらに進むことでしょう。

 

 そこまで考えてみると、2020年の東京五輪の一番のポイントは、五輪そのものの成功ではないような気がします。日本人の勤勉さ、緻密さ、国の技術力などをもってすれば、多くのアスリートを満足させる大会に導くのは、それほど難しくないでしょう。最大の焦点は、今後五輪が広く世界中で支持され、将来にわたって生き残っていけるか、開催したいと思う都市を1つでも増やしていけるか、その可能性を東京が提示できるかどうかだと思います。無事ホスト国の役割を果たし、国内に「レガシー」が残れば、それでよしという話ではありません。東京は今後の五輪のあり方や予算削減の具体的手法を目に見える形で残し、次の都市へつないでいく責務があると言えると思います。

 

過去の東京五輪に関する主な記事は以下