書く書く しかじか

旅行記、食べ歩き、スポーツ、書評などなど、赴くままに書き連ねるブログ。

フォーシーズンズ東京大手町 アフタヌーンティー ほんのりとした和になごまされて

 フォーシーズンズホテル東京大手町が2020年9月1日に開業しました。日本国内におけるフォーシーズンズは、東京・丸の内、京都に続いて3施設目になります。さっそく、アフタヌーンティーを味わいに行ってきました。

 

再開発地区の高層ビルに入居

f:id:katsushika-miyah:20200902234820j:plain


 フォーシーズンズ東京大手町は、三井物産三井不動産による再開発地区「Otemachi One」に建つ「Otemachi Oneタワー」に入居しています。40階建て、高さは200メートルで、向かいに建つ読売新聞ビルと並んで大手町地区で最も高い建物になります(2020年9月時点)。「Otemachi One」には三井物産本社ビルも建ち、こちらは31階建て、高さ160メートルとのことです。

 

 「Otemachi One」の一角には、興味深い観光スポットがあります。瓦塀で囲まれた東京都指定の史跡「将門塚」です。関東地方で権勢をふるった平安時代の豪族・平将門の首級を祀っています。首級といっても、実際に将門の首がここに眠っているわけではありません。平将門の乱承平天慶の乱)で朝廷に討たれた将門は、京都でさらし首にされました。その後、なんと首は空に舞い上がって関東に戻り、この地に落ちたといいます。そんな伝説、伝承に基づいて、ここは首塚となり、長くあがめられてきました。

f:id:katsushika-miyah:20200903002743j:plain

 将門塚をめぐっては、「祟り」と恐れられる出来事が、過去に2度あったとされています。

 

 最初は、関東大震災後の1920年代半ばのことです。国は、首塚を更地にして、被災した大蔵省の仮庁舎を建設しようとしていました。その際、当時の大蔵大臣・早速整爾はやみせいじや大蔵官僚らが急死しました。

 

 2度目は、戦後まもなくのこと。日本を統治したGHQ首塚を更地にして駐車場にしようとした際、ブルドーザーが転倒して、運転手が亡くなる事故が発生しました。

 

 これら世にも奇妙な二つの出来事によって、首塚は侵すべからざる存在として扱われることになりました。

f:id:katsushika-miyah:20200903004740j:plain

 どこまでが真実なのか、はっきりとしたことは分からないのですが、いずれにしても、恐れ多い史跡として、人々に認識されてきたのは確かなようです。

 

 将門塚を除こうとすると、また祟りが起きるのではないか―。そのように、三井物産三井不動産の関係者が考えたかどうかは定かではありませんが、結果的に、将門塚は、またしても難を逃れ、2棟のビルの間にそのまま残りました。超一等地の再開発地区に食い込むようにしてたたずむ首塚には、せわしないビジネス街の中にあって、明らかに異質な空気が流れています。

 

39階から望む皇居や新宿高層ビル群

 さて、将門塚の話が長くなってしまいました。ここから本題です。ホテルに入ります。フォーシーズンズ東京大手町の正面です。

f:id:katsushika-miyah:20200903010639j:plain

 

  入り口です。木目調の扉が、日本らしい雰囲気を醸し出しています。

f:id:katsushika-miyah:20200903010807j:plain

 入ってすぐのエレベーターホールでは、新型コロナ対策として、検温がありました。サーモカメラが2台置かれ、自動で体温が計測されます。

 

 フロントは39階です。

f:id:katsushika-miyah:20200903011403j:plain

 

 39階に到着。窓際には水が張られています。

f:id:katsushika-miyah:20200903013029j:plain

 

 アフタヌーンティーは、39階の窓側のスペースに設けられた「The Lounge(ザ・ラウンジ)」で提供されます。

f:id:katsushika-miyah:20200903013503j:plain

 

 スペースの中央は、バーカウンターになっています。

f:id:katsushika-miyah:20200903015019j:plain

 

 ザ・ラウンジからの眺望です。窓は西向きで、目の前には皇居の森が広がります。その先に国会議事堂が見えます。

f:id:katsushika-miyah:20200903015209j:plain

 

 右手後方に、西新宿の高層ビル群が見えます。

f:id:katsushika-miyah:20200903015823j:plain

 

 北西側は竹橋方面になります。手前に、白い円柱形の塔が特徴的な毎日新聞東京本社、その先に日本武道館、遠いところでは、池袋のサンシャイン60が見えます。

f:id:katsushika-miyah:20200903015428j:plain

 

シンプルな2段スタンド

 席に案内されました。窓際の席ですが、窓のそばには水が張られているので、実際には数メートルの距離があります。

f:id:katsushika-miyah:20200903020305j:plain

 

 テーブルの上には、フォーシーズンズのロゴが入った便せんのようなものが置かれています。何だろうと思って開けてみたら、中身はマスクでした。

f:id:katsushika-miyah:20200903020507j:plain

 

 コロナ対策として、サニタイザー(消毒ジェル)も。

f:id:katsushika-miyah:20200903021139j:plain

 

 まずは乾杯のスパークリングワインから。「一休」で予約すると、付いてきます。

f:id:katsushika-miyah:20200903021559j:plain

 

 さらに、オープン記念として、抹茶を無料で付けてもらいました。

f:id:katsushika-miyah:20200903021835j:plain

 

 さて、ここから食事です。シンプルな2段スタンドが運ばれてきました。無駄な装飾をそぎ落とした無骨な骨組みで、逆に好感が持てます。上の段にスイーツ、下の段にセイボリーが並べられています。

f:id:katsushika-miyah:20200903022137j:plain


 公式ホームページから転載したメニューは以下の通りです。

セイボリー
・スモークサーモンサンドイッチ 胡瓜と山葵サワークリーム
・ロブスターマリネ 日本酒のジュレとマンゴー
・ハムとコンテチーズ グラハムブレッドサンドウィッチ
・江戸味噌とフォアグラコンフィ 無花果と山椒
・南京とトリュフのタルトレット

スイーツ
・銀座 Higashiya 季節の羊羹
・銀座 Higashiya 季節のお菓子
・銀座 Higashiya 棗(なつめ)バター
・ほうじ茶プラリネミニシュー
ホワイトチョコレートとピスタチオ、ラズベリーのケーキ
・葡萄のコンポートとフロマージュブランのクリーム
・生姜の香るパッションフルーツのオペラ

スコーン
・柚子 レモン、クランベリー ピスタチオ シナモン、レーズン
 クロテッドクリーム
 季節のフルーツジャム

 

 下の段、セイボリーのアップ写真。

f:id:katsushika-miyah:20200903022631j:plain

 

 写真手前は、ハムとコンテチーズ グラハムブレッドサンドウィッチ。

f:id:katsushika-miyah:20200903024634j:plain

 

 写真の手前は、江戸味噌とフォアグラコンフィ 無花果と山椒。今回味わった中で、最も印象的な一品でした。

f:id:katsushika-miyah:20200903022725j:plain

 

 コンフィと言えば、フランス料理の調理法で、フォアグラとイチジクは、食材として定番のようです。そこに、和の代表的な調味料の味噌をあわせているのが、斬新な点でしょう。甘じょっぱい味噌が口の中で強く主張するのですが、不思議なことに、フォアグラとイチジクが負けることなく付いていき、ミスマッチと思わせません。和洋折衷という言葉を使うのは簡単ですが、それをこれほど見事に体現した料理は珍しい気がしました。

f:id:katsushika-miyah:20200903030309j:plain

 

 写真手前は、ロブスターマリネ 日本酒のジュレとマンゴー。日本酒のジュレと言いますが、アルコール分は感じませんでした。さっぱりとしていて、すっと口の中で溶けるジュレが、ロブスターのコリっとした食感とよく合います。

f:id:katsushika-miyah:20200903025803j:plain

 

 上の段のスイーツ。

f:id:katsushika-miyah:20200903024515j:plain

 

 スイーツを別角度から。写真手前の赤い一品は、ホワイトチョコレートとピスタチオ、ラズベリーのケーキ。美しい見た目の通り、味も洗練されていてハイレベルです。

f:id:katsushika-miyah:20200903024540j:plain

 

 写真右手は、HIGASHIYA GINZAの大福。HIGASHIYAと提携する形で、和菓子をメニューに取り入れています。コラボメニューという意味では、ザ・リッツカールトン京都が、ピエール・エルメのスイーツを出すなど例があるので、珍しいことではないかもしれません。

f:id:katsushika-miyah:20200903025019j:plain

 

 スコーンは3種類あります。

f:id:katsushika-miyah:20200903030138j:plain

 

 ジャムとクロテッドクリーム

f:id:katsushika-miyah:20200903030210j:plain

 

 飲み物をいくつか紹介します。フォーシーズンズ大手町のアフタヌーンティーは2時間制で、飲み放題となっています。

 

 公式サイトから転載したメニューは以下の通り。

 

紅茶
・かぶせ茶 さやまかおり
・阿波番茶
・ほうじ茶
・オリジナルハーブティー 柚子&柿の葉
・和束和紅茶
ブレンド茶爽

コーヒー
・ハウスブレンドコーヒー
エスプレッソマキアート
エスプレッソ シングル
エスプレッソ ダブル
・カフェラテ
カプチーノ
・アイスコーヒー

モクテル

煎茶サワー
・煎茶サワー煎茶
・ネマノンアルコール国産ジン
・レモンジュー
・ハチミツ、グレープフルーツオイル

ピーチティー
・ピーチティー ブレンドティー ‘爽’
・レモンジュー
・ピーチピューレ
・エルダーフラワートニック

 

 紅茶は、透明な急須で運ばれてきます。

f:id:katsushika-miyah:20200903031206j:plain

 

 紅茶の器は、いわゆる洋風のティーカップではありません。日本茶を飲むときに使うような、持ち手のないものです。個人的に、ホテルのアフタヌーンティーで紅茶を飲む際に、こうした器を使うのは初めてでした。おそらく、和を意識してのことではないかと思います。

f:id:katsushika-miyah:20200903031316j:plain

 

 ピーチティーのレモンジュース。2層に分かれていて、混ぜながら飲みます。その名の通り、ピーチとレモンの味のグラデーションを楽しめます。

f:id:katsushika-miyah:20200903030904j:plain

 

 煎茶サワー。基本的にはレモン系の味です。

f:id:katsushika-miyah:20200903031634j:plain

 

 ただ、氷の上に煎茶の茶葉が乗せられており、かき混ぜると、茶葉の香りがほんのり漂います。とても発想がユニークです。

f:id:katsushika-miyah:20200903031720j:plain

 

 日本茶の一種のかぶせ茶。全国有数のかぶせ茶の産地である三重県鈴鹿市産の葉を使っているとのことです。スタッフが目の前でいれてくれます。

f:id:katsushika-miyah:20200903031849j:plain

 

 カプチーノ。耐熱ガラスの容器に入って出てきます。

f:id:katsushika-miyah:20200903032131j:plain

 

 ブレンドコーヒー。いわゆる世のブレンドコーヒーと一線を画すかのような、しっかりとした苦味、酸味があり、おいしかったです。

f:id:katsushika-miyah:20200903032310j:plain

 

丸の内との差別化狙う?

 フォーシーズンズ東京大手町のアフタヌーンティー、堪能しました。

 

 最大の特徴は、和のテイストをほどよく取り込んだバランス感覚の良さではないかと思います。日本色を前面に押し出したアフタヌーンティーも最近では見ますが、ここは過剰ではありません。ベースは洋風なのですが、ここぞのピンポイントで、きらりと日本らしさが光るのです。とても戦略的で、洗練されています。外国人客を意識している面はあるかもしれませんが、それよりも、和の要素がほとんどないフォーシーズンズ丸の内のアフタヌーンティーと差別化を図る意味の方が強いのではないかと感じました。

 

 両ホテルは、直線距離で約1キロという近さです。東京が世界有数の大都市であることを差し引いても、これはフォーシーズンズにとって、異例の出店だったに違いありません。ニューヨークのマンハッタンにある「フォーシーズンズ・ニューヨーク」と「フォーシーズンズ・ニューヨーク・ダウンタウン」でさえ、直線距離で6キロ強ですから。

 

 丸の内と大手町は、大企業が集積したビジネス街として、その性格も似ています。そうした環境の中で、ホテルとして価値の相違を生み出すことは、後発である大手町側にとって大きな課題の一つだったのではないでしょうか。和がちらりと見える背景には、そういった理由があるのかなと想像しました。

 

 値段は税・サービス料込みで6,500円と高めではありますが、飲み物が飲み放題(2時間制、飲み物の注文は90分間)なので、多くの味を楽しめば、元は取れると思います。

 

より静かな環境を求めるならば

 フォーシーズンズ丸の内と大手町の施設面を比較してみましょう。

 

 一番大きな違いは、フロアの高さです。丸の内の「MOTIF RESTAURANT & BAR」は7階ですが、大手町は39階です。高さの違いは歴然で、眺望は圧倒的に大手町の方が優れています。目の前に皇居が広がるという点も、ポイントとして高いのではないでしょうか。

 

 一方で、落ち着いてティータイムを楽しみたいという人は、丸の内のほうを好む可能性もあります。

 

 というのも、丸の内の「MOTIF RESTAURANT & BAR」がレストランとして独立したスペースを確保しているのに対して、大手町の「The Lounge」は、ほぼ全面が、エレベーターとフロントデスクを結ぶ動線に面しています。エレベーターは地上フロアとつながっているので、動線を行き来する人の数は必然的に多くなります。

 

 先に掲載したのと同じ写真ですが、もう1度見てみてください。写真左手の窓側が「The Lounge」、右手が動線になっています。写真には写っていませんが、右手奥にエレベーターがあり、手前側に向かって進んで左に折れた先に、フロントがあります。

f:id:katsushika-miyah:20200904144542j:plain

 The Loungeと動線の間には、ご覧の通り、仕切りがほとんどありません。よく言えば開放的なスペースになっているのですが、どうしても動きまわるスタッフや宿泊客らに目が行ってしまいます。動線に近いテーブルで窓側を向いて座っていると、背中が無防備にさらされているように感じ、落ち着かない気分になる人もいるかもしれません。動線と接していないテーブルであれば大丈夫でしょうが、そうでない席に案内された場合は、建築構造上の問題だと思って、受け入れるしかないでしょう。

 

 と、細かいことを書いてしまいましたが、そうは言っても、やはりフォーシーズンズです。アフタヌーンティーのクオリティーは、文句なしに素晴らしいものがありましたし、スタッフはてきぱきと動いていて、オープンしたばかりだというのに、訓練された人材がそろっている印象でした。フォーシーズンズの看板に偽りなし、といったところでしょうか。

 

 フォーシーズンズは2023年をめどに、沖縄本島恩納村に国内4施設目をオープンさせるとのことです。どんなリゾートになるのか、楽しみに開業を待ちたいと思います。

 

 最後に写真を2枚。

 

 ライブラリー。ソファーと丸テーブルが置かれているので、軽く飲み物を飲みながら本を楽しむことができるかもしれません。

f:id:katsushika-miyah:20200905143423j:plain

 

 窓外に広がる夕暮れ時の西新宿。

f:id:katsushika-miyah:20200904045251j:plain