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お台場 五輪 トライアスロン会場 大腸菌 基準値超え 対策は? 東京2020これでいいのかvol.5

下水処理しないまま海へ放出

 東京都と東京五輪パラリンピック組織委員会が、トライアスロンなどの競技会場となるお台場海浜公園(港区)で、国際競技団体が定める基準値の最大約21倍の大腸菌が検出されたと発表しました。発表は2017年10月4日。

 

 お台場海浜公園は、東京五輪パラリンピックで、オープンウオータースイミング(マラソンスイミング)、トライアスロンのスイムの会場として使われることになっています。

 

 東京都と組織委は、五輪・パラリンピックの開催時期に合わせた7月から9月にかけて会場となる水域で計26日、水質を調べたといいます。

 

 その結果、「ふん便性大腸菌群」の数が国際水泳連盟FINA)の基準で最大約7倍、国際トライアスロン連合(ITU)の基準では「大腸菌」の数が最大約21倍、検出されました。

 

 調査した26日のうち、FINAの基準を満たしたのは10日、ITUの基準を満たしたのは6日でした。つまり、期間中の半分以上は、競技を行う上でふさわしくない数値だった、ということです。五輪ホスト国として、大きな問題としてとらえざるを得ません。

 

 FINAITUで基準として用いている指標が、ふん便性大腸菌群数、大腸菌数と違っています。国交省関東地方整備局・江戸川河川事務所のHPの説明によると、ふん便性大腸菌群数とは、このようなものをいうそうです。

 

 ふん便性大腸菌群数は、大腸菌群のうち44.5℃で培養したときに検出される細菌数のことをいいます。通常の大腸菌群数(培養温度:36℃)には、大腸菌以外に土壌・植物など自然界に由来する菌種も多く含まれますが、ふん便性大腸菌群数はふん便由来の菌(大腸菌)の数とほぼみなすことができます。

 

 つまり、お台場周辺には7~9月にかけて、ふん便を含む下水が多く流れついていた、ということになります。自然由来の大腸菌が偶然多く発生した、という意味ではありません。

 

 なぜ、ふん便が海に流れ出ているのか。それは、東京の下水道が「合流式」という排水方法が採られていることと関係しています。

 

 合流式は生活排水と雨水を同じ下水道管に流し、下水処理施設できれいにした後、川や海に放出します。

 

 しかし、大雨が降るなどして処理施設で処理できる量を超えてしまうと、汚水は処理施設に行くことなく、下水管から直接海に放流されてしまいます。

 

 東京都が管理する20の水再生センターで処理できる量は、1日あたり550万立方メートルだといいます。東京ドーム(容積124万立方メートル)でたとえると、およそ4.4杯分ということになります。

 

 東京都と組織委の説明によると、大腸菌がこれほど増えたのは、調査期間中の8月、21日間連続で雨が降ったことによる影響が大きいとのことでした。つまり、雨量が多かったため、下水処理施設の能力が追い付かず、結果的にふん便を含む汚水が多く海に流れ出たということです。

 

 確かに今夏の東京は、異常ともいえる天候でした。しかし、五輪期間中、同じように雨天が続くこともあり得ます。また、台風などによって一時的に大雨がもたらされることもあるかもしれません。そうなると、会場周辺の大腸菌数が増すのは確実です。今年の夏を例外ととらえるのは、楽観が過ぎるでしょう。

 

水質改善に努めたロンドン

 ただ、競技会場の水質は、東京に限った問題ではありません。過去の五輪を振り返ってみましょう。

 

 2012年のロンドン五輪トライアスロンのスイムは、ハイドパーク内にあるサーペンタイン湖が会場でした。ここはもともと人工湖で、テムズ川の水を引き込んでいたということです。しかし、堆積した沈殿物や藻の発生などによって、水質の悪化が問題になっていきました。

 

 このままではロンドン五輪の競技会場としてふさわしくありません。そこで五輪を前にテムズ川からの水の供給をやめました。代わりにハイドパーク内に掘った穴から地下水をくみ上げて、それを流すようにしました。地下水の方が水質がいいのは言うまでもありません。加えて、沈殿物の中和、分解を図る処置などを行ったそうです。

 

 その結果、五輪を前に水質の改善に成功したといいます。開催都市としての責任を果たしたと言えるでしょう。

 

問題だらけだったリオデジャネイロ

 対照的に、リオ五輪では水質によって問題が発生しました。セーリングの女子レーザーラジアル級で、ロンドン五輪銅メダリストのエビ・バンアッカー選手(ベルギー)がレース終了後、体調不良を訴えました。腸の感染症にかかったとされています。

 

 会場のグアナバラ湾は生活排水が流れ込み、臭いがひどいといった声のほか、動物の死骸が浮いていた、という目撃証言も多く伝えられています。

 

 リオ五輪の前年に行われたプレ大会では、セーリング競技に参加したドイツ人選手が臀部の皮膚に感染症を患い、帰国後に手術を受けたといいます。AFP通信が伝えています。

 

 また、リオ五輪のテスト大会として開かれたボートの世界選手権では、アメリカの選手団70人のうち、11選手が大会期間中に体調不良を訴えたといいます。会場はロドリゴ・デ・フレイタス湖。AP通信が伝えたところによると、ここの水をスプーン3杯分摂取しただけで99%の確率で重大な影響を与える危険性がある、ということです。

 

 五輪や世界選手権など大型のスポーツイベントは多くが大都市で行われます。そうした都市は程度の差こそあれ、水質の問題を抱えていると言っていいでしょう。

 

 会場を水質がきれいな郊外に移すと、選手の移動や宿泊施設の確保などが新たな課題となってしまいます。あちらが立てばこちらが立たず。競技環境をめぐる問題は、そう簡単に解決できるものではありません。

 

水中スクリーン、効果のほどは?

 東京五輪組織委は大腸菌対策として、水中スクリーンを使用するとした上で、競技会場の変更はないとしています。

 

 水中スクリーンはポリエステル製のカーテンです。効果があるかどうか確かめるため、港区が既に実証実験を行っています。

 

 東京新聞によると、17年7月1~30日にかけて、お台場海浜公園に水中スクリーンを張って、スクリーンの内側と外側の水質にどんな違いが出るか確かめました。

 

 長さ180メートルのロープを海面に浮かべて、その下に天地2メートルのスクリーンを吊り下げたとのことです。海浜公園周辺は平均水深が3メートル。よって2メートルのスクリーンによって、海面から半分以上の高さで仕切りができることになります。

 

 数値を測定したのはスクリーン設置期間中のうち8日間。その結果、ふん便性大腸菌の数で、6日間は環境省の基準値を下回り、2日間は上回ったとのことです。ある調査日では、スクリーンの外側と比べて内側の大腸菌数が20分の1に抑えられた日もあったといいます。

 

 組織委では対策として、五輪本番で会場周辺にスクリーンを三重に張り巡らす案を検討しているそうです。

 

 イメージはこのような感じです。

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 海面から2枚、海底から1枚、スクリーンを交互に設置し、競技水域内に汚れた水が流れ込みにくくするというものです。この方法を実現できれば、スクリーン1枚を設けるより、大腸菌流入を減らす効果はあるかもしれません。

 

 ただし、トライアスロンオープンウォータースイミングの競技水域は、決して狭くありません。トライアスロンは1.5キロ、オープンウォータースイミングは10キロの距離を泳ぎます。砂浜付近の狭い海域だけを汚れた水から守れればいいという話ではないのです。

 

 果たして広い競技海域を、とんでもなく手間がかかりそうな三重という形でスクリーンによって囲えるのか。そうした処置を行った場合、費用はいくらくらいになるのか。どう予算措置するのか。そして、根本的な問題として、下水の処理能力を上げることはできないのか。これから多くの問題を考えていく必要がありそうです。

 

東京五輪のスポンサーを取り上げた東京2020これでいいのかvol1~4は以下。

 

東京五輪招致の贈賄疑惑は以下